女性の泌尿器科– Urology for women –

日常に寄り添う泌尿器診療

女性は身体の構造や妊娠・出産、ホルモン変化の影響で、泌尿器疾患を発症しやすい傾向があります。排尿痛や頻尿、尿漏れなど、人に相談しづらい症状も少なくありませんが、放置することで悪化や慢性化、腎機能の低下につながることもあります。当院では、女性の患者様にも安心して受診いただけるよう丁寧な診察を心がけています。気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。

下記のような症状のある方は、お気軽に当院までご相談ください。

排尿・膀胱に関するお悩み

  • トイレが近く、外出が不安になる
  • すぐに尿意を感じ、我慢できないことがある
  • 咳やくしゃみ、笑った拍子に尿がもれる
  • 夜間に何度もトイレに起きてしまう
  • 排尿時に痛みや違和感、残尿感がある
  • 水の音や冷たい刺激で急に尿意を感じる
  • 健康診断で蛋白尿・血尿を指摘された
  • 尿に血が混じる、トイレットペーパーに血がつく

外陰部や膣の違和感・痛み

  • 性交時に乾燥して痛みを感じる
  • 膣の灼熱感や不快感がある
  • 外陰部に違和感がある

下腹部の症状

  • 下腹部に鈍い痛みや違和感がある
  • 膀胱炎を繰り返している
  • 薬の効果を感じにくくなってきた

排尿に関するお悩みは加齢に伴って起こることもありますが、泌尿器の病気が隠れていることも少なくありません。多くの泌尿器疾患は早期に発見・治療を行うことで、症状の改善や進行の予防が可能です。
すでに排尿トラブルに対してお薬を服用していてもなかなか改善がみられない方は、ご相談をください。
特に「トイレが近い」「夜中に何度も起きる」といった症状がある場合、

  • 日中の排尿回数が1日8回以上
  • 夜間の排尿が2回以上

といった頻度が目安になります。
ただし、感じ方には個人差がありますので、「最近トイレの回数が増えた」と感じた方は、少しでも早めの受診をご検討ください

膀胱炎は、尿道から侵入した細菌が膀胱内で増殖し、炎症を起こす病気です。女性は男性よりも尿道が短く、肛門や膣に近いため、膀胱炎にかかりやすいとされています。生涯で女性の2人に1人が経験するといわれるほど一般的な疾患です。

急性膀胱炎

最もよくみられるタイプで、細菌感染によって急に症状が現れます。

慢性膀胱炎

急性膀胱炎を繰り返す、または治りきらず長引くタイプ。

間質性膀胱炎

原因不明で、細菌感染ではないタイプ。

出血性膀胱炎

ウイルス感染や薬の副作用などで出血を伴うタイプ。

  • 頻尿(何度もトイレに行きたくなる)
  • 排尿時の痛み(しみる・ツンとした痛み)
  • 残尿感(尿を出し切れていない感じ)
  • 白く濁った尿
  • 血尿(尿に血が混じる、赤く見える)
  • 下腹部の鈍痛

症状が進行すると、発熱・背中の痛みが出ることもあり、これは腎盂腎炎などの合併症のサインです。早急に医療機関を受診してください。

膀胱炎は以下のような原因やきっかけで発症します。

  • 細菌の侵入(特に大腸菌が多い)
  • 排尿を我慢する習慣
  • 疲労やストレスによる免疫力の低下
  • 性交渉後の細菌侵入
  • ナプキンの長時間使用や不衛生な状態
  • シャワートイレの過剰使用(尿道に菌を押し込む恐れ)

問診

症状の経過や排尿の状況を伺います。

尿検査

尿中の白血球・細菌を調べ、膀胱炎かどうかを確認します。

尿培養検査

必要に応じて、どの細菌に効く抗生物質が有効か調べます。

超音波検査

再発や発熱時には腎盂腎炎の有無を確認します。

  • 薬物療法:抗生物質を1週間ほど服用します。最近では一部の抗生物質に耐性を持つ菌もあるため、培養結果に基づき薬を調整することもあります。
  • 日常生活の注意
     - 水分をしっかり摂る
     - 排尿を我慢しない
     - 清潔に保つ(過度な洗浄は避ける)
     - 体を冷やさないようにする

症状が治まっても、自己判断で治療を中断せず、医師の指示どおりに継続することが大切です。中途半端な治療は再発や慢性化、薬剤耐性菌の原因になります。

膀胱炎は、症状が落ち着いた後でも再発することが少なくありません。日常生活の中で膀胱への負担を減らす工夫を取り入れることで、再発リスクを下げることができます。

免疫力を保つ

疲れ・睡眠不足・ストレスは免疫力を下げ、発症リスクを高めます。体調管理を心がけましょう。

水分をしっかり摂る

尿の量が少ないと細菌が膀胱内で繁殖しやすくなります。こまめに水を飲んで、排尿回数を保ちましょう。

尿意は我慢しない

排尿には膀胱内の細菌を洗い流す効果があります。尿意を感じたらすぐトイレに行きましょう。

トイレに注意

排便後は前から後ろに拭くようにし、シャワートイレの使いすぎにも注意を。使用時は尿道に水が当たらないようにしましょう。

性行為後・生理中のケア

性行為後はできるだけ早く排尿し、膀胱に入った細菌を排出。生理中はナプキンをこまめに交換して清潔を保ちましょう。

下半身を冷やさない

冷えは免疫力を低下させます。入浴で体を温め、外出時も腹部や腰回りを冷やさないようにしましょう。

基礎疾患の管理

糖尿病や尿路結石があると膀胱炎が再発しやすくなります。必要に応じて泌尿器科での診察を受けましょう。

過活動膀胱とは、突然強い尿意が起こり、我慢が難しくなる「尿意切迫感」、我慢できずに漏らしてしまう「切迫性尿失禁」、トイレの回数が多くなる「頻尿」などの症状が現れる病気です。特に50歳以上の方に多く見られ、生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼすことがあります。

  • 尿意切迫感:急に我慢できないほど強い尿意を感じる
  • 切迫性尿失禁:突然の尿意に間に合わず漏らしてしまうことがある
  • 頻尿:1日に8回以上トイレに行く
  • 夜間頻尿:夜中に何度もトイレに起きる
  • その他、水の流れる音や水に触れただけで尿意を感じることもあります。

これらの症状は日常生活に支障をきたし、不安やストレスの原因となります。

脳や脊髄などの神経と膀胱や尿道をつなぐ神経に障害があることで起こる「神経因性過活動膀胱」と、そうした神経の問題がない「非神経因性過活動膀胱」の2種類があります。加齢に伴って膀胱が敏感になることや、原因がはっきりしない特発性のケースが多いですが、以下のような疾患や状態も原因となることがあります。

  • 骨盤底筋の緩みやトラブル(女性に多い):骨盤底筋は膀胱や子宮、尿道を支える筋肉で、出産や加齢で弱くなることがあります。
  • 神経系の疾患:脳卒中、パーキンソン病、脊柱管狭窄症など脳や脊髄の障害が膀胱の神経制御に影響し、症状を引き起こすことがあります。
  • 膀胱炎や結石、がんなどの他の病気:症状が似ているため、正確な診断が重要です。

診断は主に症状に基づきます。

  • 過活動膀胱症状質問票で症状の頻度や程度を評価。
  • 尿検査で感染症や他の疾患を除外。
  • 超音波検査で膀胱や腎臓の状態、残尿の有無を確認。
  • 排尿日誌で排尿の回数や尿量を記録。
  • 必要に応じて膀胱内圧測定など専門的な検査も行います。

薬物療法

  • 抗コリン薬やβ3受容体作動薬などで膀胱の過敏な収縮を抑制。
  • 副作用の説明をしっかり行い、患者様の体調や生活に合わせて処方。

生活習慣の改善

  • 水分の摂り過ぎやカフェイン、アルコールの摂取を控える。
  • 外出時はトイレの場所を確認し、早めに行く習慣をつける。

膀胱訓練

  • 尿意を感じてもすぐにトイレに行かず、少しずつ我慢することで膀胱の容量を増やす訓練。
  • 膀胱炎のリスクがある方は医師と相談しながら行います。

骨盤底筋体操

  • 骨盤底筋を鍛えて尿漏れや頻尿を改善。
  • 特に出産経験のある女性に効果的。継続が大切です。

過活動膀胱は適切な治療で改善・コントロール可能です。患者様一人ひとりの症状や生活スタイルに合わせた治療をご提案します。「年齢のせい」とあきらめずに、まずはお気軽にご相談ください。

腎盂腎炎(じんうじんえん)は、腎臓の中にある「腎実質」や「腎盂腎杯」という部分に細菌が感染して炎症を起こす病気です。多くの場合、膀胱炎や尿道炎といった下部尿路感染症が悪化して、細菌が尿の通り道を逆流し、腎臓まで達することで発症します。特に女性は尿道が短いため、膀胱炎などの尿路感染症をきっかけに腎盂腎炎を起こしやすい傾向があります。

腎盂腎炎の症状は、通常の膀胱炎の症状に加えて、以下のような全身症状が強く出ることが特徴です。

  • 排尿時の痛み(排尿痛)
  • 頻尿・残尿感
  • 血尿や白く濁った尿
  • 38度以上の高熱や寒気
  • 背中や腰の痛み(特に片側)
  • 吐き気・嘔吐
  • 脱水症状

感冒(風邪)のような症状がなく、突然高熱が出る場合は要注意です。

膀胱炎などの尿路感染症が悪化し、細菌が尿の通り道を逆流して腎臓まで感染することです。

症状や検査結果から総合的に判断し、入院が必要かどうかも含めて診療を行います。

  • 尿検査(尿中の白血球・細菌の確認)
  • 血液検査(炎症反応、腎機能の評価)
  • 超音波(エコー)検査(腎臓の腫れや尿のうっ滞、水腎症の有無)

治療の中心は抗菌薬(抗生物質)の内服または点滴です。炎症の程度や全身状態によって治療方針が変わります。

  • 外来で治療可能なケース:比較的軽症で、全身状態が安定している場合、脱水や強い痛みがない場合
  • 入院治療が必要なケース:高熱や嘔吐が続いている、腎臓に尿がたまる「水腎症」や、腎機能低下がみられる、点滴や適切な管理が必要な場合

神経因性膀胱とは、「尿を溜める」「尿を出す」という膀胱の働きに不調が起きている状態です。
通常、膀胱は尿が適量たまるまで待ち、脳から「そろそろ出していいよ」という指令を受けてスムーズに排尿します。この調整は、膀胱と脳をつなぐ神経のネットワークによって行われています。しかし、脳梗塞・パーキンソン病・脊髄損傷・糖尿病などでこのネットワークがうまく働かなくなると、尿をうまく溜められなかったり、尿意がわからなかったり、逆に出そうとしても出せないといった症状が現れます。

神経のどこに障害が起きているかによって症状はさまざまですが、以下のようなサインが見られます。

  • 尿意がない、または感じにくい
  • 尿を溜めにくく、すぐに漏れてしまう(尿漏れ)
  • 尿意があっても出せない(排尿困難)
  • 排尿してもすっきりしない(残尿感)
  • 頻尿や夜間頻尿
  • 尿が出にくいため、膀胱に常に尿が残り、膀胱炎や腎機能低下のリスクが高まることもあります
  • 脳や脊髄の疾患(脳梗塞、脳出血、パーキンソン病、多発性硬化症など)
  • 脊髄損傷・脊柱管狭窄症・二分脊椎
  • 糖尿病による末梢神経障害
  • 尿検査や超音波検査による残尿の確認
  • 必要に応じて膀胱内圧測定などの専門的な検査
  • 原因疾患の有無(脳・脊髄MRIなど)も確認します
  • 薬物療法:膀胱の収縮を抑える薬や、排尿を促す薬などを使用
  • カテーテル導尿:自力で排尿が難しい場合、一定時間ごとにカテーテルで排尿
  • 自己導尿の指導:必要に応じて自宅でできる方法を指導
  • 生活指導:水分摂取のタイミングやトイレの計画的使用など

神経因性膀胱は、原因となる疾患の有無によって治療法が異なります。また、放置してしまうと感染や腎機能障害などの重大な問題につながることもあります。「年齢のせい」や「恥ずかしい」と我慢せず、排尿に関する違和感や悩みがあれば、早めにご相談ください